初雪

2016.12.29

昨日の朝、西脇ではひっそりと初雪が降りました。いつも以上に冷え込んでいるなと思ってカーテンを開けると、雪がはらはらと舞っていました。大きくてふんわりとした雪の時、コートに降り立ったものをじっと見つめて雪の結晶のかたちを見つけると、いくつになっても、おお……!とやっぱり感動してしまいます。ただ、氷のかたまりが地上に到達する中で、自然とあんな繊細な形が作られているのはなんとも不思議。

太陽が高く上がってくると雪はすぐに溶け出して、少し切なかったですが、光にきらきらと反射してそれもまた綺麗でした。雪解けと共に、アトリエの大掃除も終わり。もう年の瀬ですね。今年もありがとうございました。皆様、良い新年をお迎えください。

近所の花 vol.2 [ポットマム]

2016.12.14

真っ赤に熟れた柿の木の横で背が低く咲いていた黄色い花。冷え切った朝の空気の中、ボンボンと花をつけて、すごい生命力で咲き誇っていました。

この種類、名前は[ポットマム]という種類の一つなのだそう。その名の通り、鉢植え(ポット)のキクを指しています。1950年代にアメリカで鉢植え向きの園芸品種が育成されて、ポットマムという名称で販売されたのが始まりだといいます。

もとは園芸用の苗として売っていたものが、地面に植え替えられていたんですね。冬の光景で異様に目にとまった理由が、なんだかわかったような気がします。

34°58’17.8″N 134°58’03.7″E

instagram #ポットマム

近所の花 vol.1 [君が代蘭]

2016.12.07

冬の朝、冷え込んだ空気の中を走りたくなって、この頃ランニングを始めてみました。道端に目を向けると、秋の初めは見られなかった花が咲いていたり、小さな発見があります。そんな日々を過ごすなかで、ふと目にとまった草花を活けてみることにしました。

西脇を南北に横断するJR加古川線の線路沿い。実はいろんな植物が緑々と生えており、その中でも一段と白い花が映えていました。

和名で[君が代蘭]といいます。花が数多く咲き続け、いつまでも栄えるという意味を込めてつけられたのだそう。一度耳にすると、忘れない名前ですね。

34°58’27.5″N 134°58’10.3″E

instagram #君が代蘭

hatsutoki books vol.15 [thalia]

2016.11.07

今日紹介するのは、フジモリメグミさんという写真家の作品を収めたzine [thalia]。日常の風景を残していくことをテーマに、311の震災後から撮影された写真が並んでいます。「残していく」という言葉がふさわしく、はっと目をとめてしまうような一瞬の景色も”淡々と”シャッターを切っているかのような、独特の温度感が印象的。

初めてメグミさんの作品を見たのは、友人の紹介で表参道のスパイラルでの展示に行った時でした。水の底から上を見上げたときに撮ったような写真があって「これ、別に水に潜って撮ったんじゃないんだよね。結構、身近な場所で撮ってるよ」というようなことを話されていたのが妙に記憶に残っています。身近で、素朴で日常的で、それこそがうつしくて尊いんだなあということをふと思ってしまう作品。それでいて、甘えがなく、凛とした芯を感じられる。たまに「これは……なんだろう」というようなふしぎな景色もある。きっと同じ場面にいても、何か特別なアンテナを持っている彼女しか捉えられない風景なんだろうと、写真を見るたびに思えてしまいます。

このzineは、個展に行った時に買いました。好きなカットを開いて部屋に飾ったりできて、季節の変わり目などにカレンダーのようにページを変えています。メグミさんのキュートでチャーミングでさっぱりしたお人柄が、これまた素敵なのです。

_tatsuyama

hatsutoki books vol. 14 [HET VERZAMELD BREIWERK VAN LOES VEENSTRA]

2016.10.17

今回ご紹介するのはLOES VEENSTRAという、オランダに住む女性が50年以上かけて編み続けた、500以上のウールのセーターが集められた本です。一つひとつ全く違うデザインのセーターは、色の組み合わせもかたちも独特でどれも魅力的。しかし、これらは長いこと誰にも着られないまま彼女の家で眠り続けていました。

実はもともと彼女は禁煙をしたかったがために、手持ち無沙汰にならないよう編物をしていたのだそうです。編んでは屋根裏にとっておくことを繰り返した蓄積……と聞くと、ページの中のニットたちがなんだか一層愛おしく思えてきます。オランダのデザイナー・CHRISTIEN MEINDERTSMAが着目したことをきっかけに作品を本にまとめたのだそう。フラッシュモブのようなスタイルで、彼女のセーターを500人以上に及ぶ出演者が纏う動画を作っていました。

自分がかつて織物を学んだ時の先生が「織物は機械や道具が色々とないとできないけど、編物はどこででも棒と糸さえあればできるのよね」と話していたのを、今も時々思い出します。生地のなかでも、使う糸の種類や生産の仕組みなど、織物とニットではちがうことが沢山。同じ素材を使っても出来上がった表情も全くちがいました。

というのも、実はhatsutokiも今シーズン初めて、ニットの商品を作ってみたのです。糸はカシミアとコットンを撚り合せたもので、それを編んだらどうなるのかワクワクしながら作ったニットキャップ。ほかの産地の技術を取り入れつつ、作るものの幅が少し広がったように思えます。オンラインストアにも登場していますので、よかったら見てみてください。

_tatsuyama

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コットンカシミアリブニットキャップ

[グレー][カーキ]

hatsutoki books vol. 13 [ホテル カクタス]

2016.09.23

9月も下旬にさしかかり、ようやく秋の気配が感じられてきました。hatsutokiの2016年秋冬のテーマは「帰郷」ということで、帰る場所にまつわる本にしようと思います。今回紹介するのは江國香織の「ホテル カクタス」。

この本の登場人物は、きゅうりと帽子と数字の2。なんのことだか……と思われるかもしれませんが、全員、正真正銘本物のそれらなのです。きゅうりはおおらかな土地で育った、みずみずしくすこやかな青年で、帽子はかつては行商をしたり、占いをしながら転々と色々な持ち主を渡り歩いていた放浪者、数字の2は几帳面な性格で、割り切れない物事には耐えられない性格です。

彼らが一つのアパートで住まう日常が描かれた話は、可笑しみがありつつも、もしも私たちの身の回りのモノが話せたならば……と想像してしまいます。ばらばらな生い立ちを持つ者同士が、何かの縁で一つ屋根の下で暮らしている時間は家族や友人のようでもあり、自分たちの身近な関係と重なります。へとへとになった時に帰る場所や、話し込んで夜が明かせるような人がいることは幸せだなと、ふと思ってしまう作品です。

_tatsuyama

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hatsutoki books vol. 12 [地球の上に生きる]

2016.08.21

今回紹介するのは、アリシア・ベイ=ローレルの[地球の上に生きる]。彼女が、1960年代後半にウィラーズ・ランチで暮らした20代の実体験をもとに綴られています。住居の作り方や野外での調理法、せっけんの作り方や薬草の利用の仕方(さらには自分でするお産まで!)あらゆる人の生活に関わるテーマについて、漂うような絵と文章で書かれている一冊。

この本が長く読み継がれているのは、自然とともに暮らすことへあこがれる気持ちや、今や知らないことばかりとなった環境への脅威が私たちの中にあるからなのだろうと思います。その一方で「意外と、飲み水って手に入れられるのかも」と安心する心地もおぼえたり。

この本に載っている内容をし尽くすということは容易くありませんが、一つずつ実践してみるということはできそうです。身近なところでいえば、果実酢の作り方というのを読んで、まずやってみようと思いました。そして、ついつい夢みてしまったのは可動式の住居。車や船の上で住んで生活するというのはとても身軽で、たくましくて、いろんな景色を見られそう。かつては移住の習慣が深く人々に根付いていたように、それは人生で一度経験したい感覚です。

_tatsuyama

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イメージの発見と記憶

2016.08.21

アイデアの素を探すときはいつも気になったものを写真に撮ったり、過去に撮った写真を掘り返したりすることから始まります。カメラという道具は本当に不思議なもので、僕にとって目のようで手のようでもあります。何か被写体を写した瞬間に、もうイメージが形になって吐き出されるされている。イメージの発見から創作までが一瞬にして行われてしまうのです。

何か思いついた事を形にするには多くの場合創作のプロセスの時間が入ります。それは絵でも服でも建築でも音楽でもそうだと思うのですが、僕にとって写真は何しろ早いのです。写真を沢山撮ることはインプットとアウトプットの連続です。発見と出力を繰り返すことで、アイデアを形にする癖の様なものを付けるトレーニングになっているのかもしれません。世界を平面に置き換えられるところも興味深いところです。見ている景色を写真におさめて一旦平面にするプロセスは、その後、平面の布に世界観を反映させる作業をスムーズにもしてくれます。

ふとした瞬間に訪れる些細な感動や美しい光を感じ、シャッターを切る。発見と創作が瞬時に行われることで、脳の中にもより強いイメージとして記憶が残ります。そのイメージのストックこそがアイデアの素となるのだと思います。また逆に、日常にどれだけ美しい瞬間が多いかを気づかせてくれる装置でもあるのかもしれません。

_murata

hatsutoki books vol.11 [DOLCE VIA]

2016.08.14

今回紹介するのはCharles H.Traubの[DOLCE VIA -ITALY IN THE 1980s-]。彼はアメリカ生まれのストリートスナップを撮り続けている写真家で、1980年代、頻繁にイタリアを訪れてはローマやナポリ、ベニスやミランの街中を写したものがおさめられています。

海の青さも、人々が纏うビビッドな色の服も、街の中に溶け込む石像や石壁の白さも、生き生きとして目に映るのが印象的。日差しの強さが伝わってくるような鮮やかな色彩が、日本から離れた風土だということを感じさせます。

異国の地を訪れた者ならではのみずみずしい切り取り方で、人々の生活が映されているのは、眺めているだけで旅行をしているような気分。土地の陽気なのか、時代なのか、希望と憂いがどちらも色濃く映ったようなイタリアの人たちの暮らしは素朴で、チャーミングで開放的なのです。その雰囲気や空気に、なぜか懐かしさも感じてしまう一冊。

_tatsuyama

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hatsutoki books vol.10 [安東陽子|テキスタイル・空間・建築]

2016.07.31

今回紹介するのは、テキスタイルデザイナー安東陽子さんの作品集。テキスタイルと建築の関係について書かれた本というのはめずらしく、空間の中でうつくしく見える生地に焦点が合った写真は新鮮です。

建築というと、重たさや硬質な感じを覚えがちですが、空間にテキスタイルの質感を足すことで、「軽やかさ」や「透明感」を生み、その場所の空気のようなものを可視化できるのだな、と彼女の作品を見て思えました。一人ひとり身体の特徴が違うように、建築も環境や素材によって全く姿がちがうもの。「一番肌に近い建築」として、建物が服をまとうように考え抜かれた作品の明確さやシンプルさに、きっと使い手も心地よさを覚えるだろうなと感じます。

安東さんを初めて知ったのは、あるトークイベントに出演されていたとき。凛とした、しなやかさのある作品の空気とご本人はそのまま重なり、感激した勢いにのって、イベント終了後無心で駆けつけて声をかけてしまいました。数年経った今でも、本を眺めるたびにその瞬間を思い出してしまう一冊。

_tatsuyama

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