hatsutoki books vol.7 [水の生きもの]

2016.07.11

ランバロス・ジャーの[水の生きもの]。インドに伝わる民俗絵画、ミティラー画をモチーフに作られた絵本。ランバロス・ジャーはガンジス川のほとりで生まれ育ち、水とその中に棲む生きものに魅せられるようになったのだといいます。

ミティラー画は、インド東部のビハール州で受け継がれてきたもので、もともとその描き手は女性でした。母親から娘へと、3千年に渡って伝えられてきたものなのだそうです。日照りや、長い雨期、洪水、地震、ヒマラヤの極寒の風。それらの自然の脅威に対して、作物の豊穰と家族の幸せを祈って、土壁や床に描かれ続けてきました。
 
一枚ずつ擦られた絵の色彩は鮮やかで、水の生きものが生き生きと目に映ります。背景となる水の描写も細やかでうつくしく、しずかに命が溢れている、海の中の独特な世界が描かれています。波紋のような模様や、海底に佇む水の流れ、海藻の揺らめきが一本一本の線によって表現され、日常で流れる時間の速度と少し違った時空間を感じられる作品です。

instagram #hatsutokibooks

播州織ができるまで④ -整経について-

2016.07.07

染まった糸の緯糸は機屋さんへ、経糸は織る準備をするために整経工場に送られます。経糸準備は「整経」と「糊つけ(サイジング)」の二工程に分けることができます。

整経とは文字通り、数千本もの経糸を一本ずつ整える作業。上の写真のように、糸の長さを揃えて「ビーム」という円柱状のものに巻きつけていきます。

DSC_1096

<ストライプ柄の経糸>

ストライプ柄やチェック柄など経糸に複数の色を使う場合は、デザインどおりに経糸を並べることも整経作業の中で行います。

これで、織り上げるのに必要な経糸が準備完了、と言いたいところですがもう一工程。次回は経糸を頑丈にするための「糊付け」の工程についてお話します。

木漏れ日の神社

2016.07.06

ここは、西脇の中心から少し離れた小高い山のふもとにある静かな神社の森。夏でもひやりと冷たい空気と、大きな杉の間からの木漏れ日がとても心地よくて、たまに訪れたくなる場所です。

小さな村の古い神社なのですが、50mほどの砂利の参道は丁寧に整備されていて、左右を囲う杉はとても立派で綺麗に枝打ちされています。きっと昔々から村の人に大切にされてきたのだと思います。参道の入り口、控えめな鳥居なのですが、くぐると心が引き締まる気がして背筋がすっと伸びるのです。梅雨がもうすぐ開けて、夏バテしそうになったらここに行って気持ちをリセットしよう、と、今から夏バテ対策を練っているのです。

_murata

hatsutoki books vol.6 [ autoprogettazione? ]

2016.07.05

今回ご紹介するのは、デザイナーENZO MARIの著書で、1974年に発表した「autoprogettazione?」(訳:セルフデザイン)というプロジェクトを収録した一冊。紹介されているほぼすべての家具が1~2種類の部材しか使っておらず、のこぎりで直角に切って釘で打ち付けるだけで完成。ENZO MARIはイタリアの工業デザイナーですが、この本は彼の作品集ではなく、あくまでDIYができるように誰でも製作できる入門書になっています。

そうはいっても、まず見入ってしまうのが家具ひとつずつの造形の格好良さ。最低限の材料で提案されたかたちは、これぞ必要美なのだなと感じます。そのなかにも、彼の遊び心がひそんでいるようで「このかたちもいいけど、脚のかたちはこう変えてみても面白いだろう?」という声が、図面や完成図をみていると聞こえてきそうに思えます。

椅子や机がほしいとき、つい完成されたかたちから想像したり選びがちですが、そのアイテムで「何がしたいだろう」「誰と一緒に使おうか?」とより具体的に考えると、実はもっといろんな自由な形の家具を一人ひとり持ってもいいのではないかと思ってしまう、そんな一冊。この本を片手に、日曜大工をしてみると楽しいかもしれません。

instagram #hatsutokibooks

曇り空、ストライプ

2016.06.30

ほのかに霧が掛かったような、白に近いライトグレーの地。サックスのストライプを水に見立て、ストライプを囲うように細い細い金糸を忍ばせました。光が金糸に当たるとちかちかと反射します。霧の向こうから光が差し込み、水滴に光が反射する。そんなイメージのストライプシャツです。

_murata

 


 

ONLINE STORE

ピンストライプスタンドカラーシャツ

ラメストライプロングタンク

播州織ができるまで③ -染料について-

2016.06.29

繊維を染める染料は大きく分けて二種類で、藍染めや泥染めなど自然由来の天然染料と、石油をはじめ化学的に合成された合成染料があります。合成染料のなかでも、綿織物の産地である西脇は「反応染料」という染料を用いて綿糸を染めています。この染色方法は堅牢度がよく、色が鮮明であるのが特徴です。

写真は、様々な濃度の染料が入ったビーカー。基本的な染料はたった数種類なのですが、それぞれを抽出し混ぜ合わせる割合を微調整して、出したい色を作ります。

DSC_1076

近い色合いでも、その幅は無限。工場内にはすごい量の糸の色見本がずらりと揃っています。微妙な色味も、染料のデータをしっかりと取ることでいつでもまた同じ色を再現できます。ブランドが通年を通して安定したクオリティの商品を作り出せる裏側には、染色のこまやかな仕事がなくてはならないのです。

砥峰高原

2016.06.27

西脇市から車で90分ほどのところにある草原が広がる砥峰(とのみね)高原。写真は以前夏に訪れた際に撮ったものなのですが、山の上に広がる高原なので、ひんやりとした空気がとても気持ちよかった事を覚えています。この日は雲におおわれていて、すかっと景色が見えたわけではないのですが、グレーの雲が緑の草原を引き立てていた景色がとても印象に残っていました。

秋はすすきが広がる高原の景色は観光名所としても有名です。映画「ノルウェイの森」のロケ地になったことでも話題になりました。美しい高原の景色はどのシーズンに行ってもきっと楽しめると思います。夏の夜、流星群に合わせて行くと、すごい数の流れ星と天の川も見れるそうです。是非訪れて見てください。

hatsutoki books vol.5 [Storm Last Night]

2016.06.25

今回紹介するのは、写真家・津田直の[Storm Last Night]。彼の祖父がかつて住んでいたという家を探しに、わずかな手掛かりをもとにはじまった、アイルランドの地への旅がおさめられています。

自身の記憶を遡りつつ歩き回るなかで、先住民の残した聖跡や、無文字文化に生きた人々が築いた住居跡、人間がかつて暮らしていた島々へ辿り着きました。風景が信仰の対象であったという古代の人々にとっては、その土地がどんな意味を持っていたのだろうかと、人と自然の関わりを考えながらそれぞれの場所を巡っていたのだといいます。

彼の捉える写真は、場所を決定づけるたしかな何かが写されているわけではない、自然の景色がほとんどなのですが、その風景になぜか固有の力強さを感じます。土地の空気や魅力というのは、そこにかつて人が住まった記憶や生き物の気配のようなものが蓄積されることで作られるのかもしれないと思うと、日常や旅先での風景もどこか特別に感じそうです。

水の季節

2016.06.24

湿気に包まれて少し身体が重たいような。すっかり梅雨に入って雨が続いています。この季節になると、草木は一気に成長するようです。水々しい毎日は植物にとってはとても気持ちよいのでしょう。

ふと雲の切れ間から差し込む光は湿気で拡散して柔らかく、夏のそれとはやはり違います。同時に水気を含んだ草花がきらきらと輝くので、水の季節ならではの美しい世界が現れるのです。普段が薄暗い為か、余計にその一時の感動が大きいのかもしれません。

「梅雨は憂鬱」と思い込んでいたのですが、この土地に暮らす限りはそうでもないかもしれません。朝、すぅっと深呼吸した時の、少し冷たく潤った空気はとても新鮮で身体に染み渡るような感じがします。雨は草木にとっても人にとっても、生きる力のようなものを与えてくれるのかもしれないですね。

_murata

播州織ができるまで②-糸について-

2016.06.21

今回は、染める「糸」について。前回お話ししたように、hatsutokiの生地が生まれる播州は先染めの手法が特徴のひとつです。染色時の糸の状態は3つに分けることができ、それぞれ綛(かせ)、チーズ、ビームと呼ばれています。上の写真は、ナチュラル・チーズの固まりのような形をしていることから「チーズ」といわれています。

播州では糸を紡績会社から調達して、織物を作っています。仕入れた原糸も同じようなロール状なのですが、染色するときのチーズとはちょっとした違いがあります。ひとつは芯。原糸の芯は紙製や木製のものですが、染色のために巻き直されたチーズは、芯がステンレス製で表面に多数の穴が空いていたり、メッシュ状になっていたりします。これは、ロールの内側から染液に染み込ませるためです。(写真の右側は染色のために巻かれたもので、左は染色後の糸が紙製の芯に巻き直されたものです。)

もうひとつの違いは、チーズの上部分。染色のためのチーズは、少し肩が落ちたように丸みを帯びた円柱になっています。これは糸の重なり具合によって染めむらを生じさせないためで、このかたちにする工程を「肩おとし」と呼んでいます。前回の写真は、チーズが今まさに染色の釜へ入っていくようす。この手法で、まとまった量の糸を染め上げることができるのです。