播州織ができるまで⑧ -畦取りのしごとについて-

2016.08.09

前回に引き続き、畦取りについてのお話です。この道38年の職人さんの手は畦を取るかたちを保ったまま、指が大きく広がらないのだそう。一本ずつ糸をすくっていくと聞いただけでも気が遠くなるように感じますが、100番単糸などの極細糸だとなおのこと難しそうに思えます。そんな考えとは裏腹に「細い糸ほど、やりやすいのよ」と職人さんは話していました。

作業の上で大切な仕事道具の一つは、爪だと言います。眠るときは手入れした爪が折れないよう、下の写真のように親指を覆うように握って寝る癖が付いているのだとか。仕事場の足元には、爪切りやヤスリも置かれていました。この爪を使って糸を拾っては、色順をひたすら整えていきます。

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仕事に合わせて、からだの一部も順応させたり、変わることに仕事への真摯な姿勢をあらためて感じました。仕事や習慣というものは日々の生活の中で、その人自身に変化を与えていくものなのだということを実感。