
hatsutoki books vol.22 [It’s beautiful here , isn’t it…]
2017.06.13
何でもない見過ごしていた風景が、どこかかけがえのない、特別で愛おしい物になってしまう。そんな魔法の様にも感じるイタリアの写真家、ルイジ・ギッリ(Luigi Ghirri)の作品集「It’s beautiful here , isn’t it…」をご紹介します。
ページをめくると、写真で映されているものは、どこにでもありそうな風景、誰も気にもとめていない物(古びた看板や、商店のショーウィンドウ、壁に生える蔦、無造作にテーブルに置かれた野菜……等々)なのです。しかし、それらの被写体はとても柔らかい光に包まれ、色彩にあふれ、精密に計算された構図、ウィットに富んだ暖かい目線で美しく切り撮られています。
タイトルは邦訳すると「ここは美しい場所でしょう…?」といった感じでしょうか。「ここ」とは、きっと自分が今いるこの場所や時代のことなのかもしれません。ギッリの写真を見ていると「ここ」はとてもかけがえのない場所で、美しく感じるかどうかはあなた次第……と教えてくれているような気がしてきます。
写真を愛し、写真に生涯を捧げた芸術家 ルイジ・ギッリは大きく時代を変えるような、特別な、革命的な何かを生み出したわけではないかもしれません。しかしいつ、どんな時代の誰が見ても、どこかほっとするユーモアに溢れ、記憶のなかの大切なものを思い出させてくれるような写真を淡々と、そして情熱的に撮り続けた写真家なのです。