シルクの歴史

2018.02.14

シルクは、綿と同じくらいに私たちにとって身近な素材。先日シルクを扱う糸屋さんにお会いし、その歴史をあらためてうかがいました。

そもそも、人々の間でシルクが使われはじめたのはおよそ5000年から6000年前の中国からといわれています。野生の蚕の繭を集め、糸をつむぎだして絹織物を作ったのがはじまり。その後、蚕を家の中で飼育し、効率的にシルクの生産ができるように改良が重ねられて、現在の家蚕になったと考えられています。

日本にはシルクロードができるより前の弥生時代のから、独自の養蚕・製糸・染色技術が存在していました。その後も中国大陸や朝鮮半島からの渡来人によって、中国の蚕種や先進的な技術が持ち込まれ、日本各地で独自の発展を遂げて、多様な絹産地が形成されました。

お話の中で興味深かったことの一つは、今のような工業生産が可能になったきっかけが、今よりはるかに昔の江戸時代だったということ。当時、ヨーロッパで蚕の病気が流行し絹織物の産業が壊滅状態に陥ったことから、ヨーロッパ諸国は洋式製糸器械を日本をはじめとしたアジアの国々に伝え、生糸を輸入するようになりました。1862年には日本の輸出品の86%が生糸と蚕種になるまでに成長。それ以降、1900年半ばにかけて絹織物の生産は日本の主要産業に発展していったのです。

しかし、現在の国内のシルクの生産量は昨年で約18t、それに比べて世界一の生産を誇る中国は7000t。その中国でも年々生産量が減り、シルクの値段は高くなっているのだそうです。ゆくゆくは中国もシルクの輸入国となるだろうと糸屋さんは話されていました。

同じか、それ以上の技術があったとしても、複数の要素が関わり合って、産業が場所を常に横断していく。長い時間軸でシルクの歴史をあらためて捉えていると、それは綿織物ではどうだろうかと考えざるを得ません。同じような動きは綿においてもいえることですが、抗えないこの時代の流れの中で、唯一無二のものを作っていくことしか道はないのではないかと思いました。私たちだからこそ作れるものとはなんだろうか、これからも日々学び、考えながら作り続けたいと感じたときでした。