有松絞り

2018.02.21

先日、愛知県の有松へ行きました。東海道の通り道であるこの町は、かつて茶屋町として栄えた時の趣が今も感じられるような美しい家並みが続くところでした。家々の軒先には「ありまつ」の文字。よく見ると、絞りがほどこされて染められたものです。

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この地は江戸時代の初期から絞りの産地として栄えてきました。旅人が故郷への土産にと絞りの手拭、浴衣などを買い求め、これが街道一の名産物となったのです。人の手で行われる独特の染め具合が美しい絞りは、今も職人さんによって受け継がれています。上にある、斑点模様のようなものが写った写真は、絞りをどこにほどこしていくか目印を付けた「絵刷り」をされた状態のもの。この絵のための型作りから、昔から職人さんが一つずつの点を手で打って作っていました。

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それを次に、一つずつ手作業で絞っていきます。私の祖母は愛知の生まれなのですが、実は幼い頃にこの仕事をしていたのだそうです。それを知ったのは、本当につい最近でした。生活に必要なお金を稼ぐために、祖母のほかにも十歳前後の女の子や、お年寄りの女性がみんなでこの絞りの作業をして働いていたのだそうです。この時、現場にいらして技を見せてくださった方も、この道50年以上の方でした。

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絞りというと、表の括られた状態はよくみますが、これは裏側。絞られた表情も美しく感じます。この状態のものを染液に浸けて、生地を染めていきます。最後に、括られた部分を解くことで染め分けられた部分が出てきて、きれいな模様が現れるのです。

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伝統の絞り技法は100種類にも及ぶのだそうで、ここ有松とお隣の鳴海では日本の生産量の90%以上を占めています。今もなお多様な種類の手法が職人さんによって編み出されています。一つひとつの模様の偶発性と高い技術から生まれた、独特の染め上がりに思わず息を飲んでしまいました。そして西脇と同様、有松の産地でも若いデザイナーたちが古くからの技術を今に伝えようとものづくりをして暮らしていました。新鮮な視点からアイデアを生み、時代の流れに沿ったデザインをすることで、自分たちもものづくりをしていきたいとあらためて感じました。