播州の染め

2018.05.22

染色工場へうかがったとき、染色の色見本を見せていただきました。ずらりと並ぶ色は二万色以上だそうです。何十年も染め続けてきた蓄積は、今もなお増え続けており、色とは無限にあるのだと思えました。

以前、機屋さんとお会いして、この土地だからこそ生まれる織物とは何か、ということについて話していました。今の時代、生地を織り上げる織機も糸も輸入できる。職人の技術があれば、播州ではなくてもどこでも織れるんだと言っていました。そんな中で、この土地が誇れるものはやはり、染めに適した水の資源に恵まれ、糸の染めから織物を作り上げられる環境だとおっしゃっていました。

播州を南北に流れる加古川は、染めに適した軟水が流れています。日本の多くをしめるこの水質は、不純物が少なく、季節によって成分が大きく変化しないなど、染色に関する条件がいいのだそうです。今も染色工場をはじめとする、様々な現場は川沿いなど水の近くに隣接して建っています。

産地がかつて、繊維産業の恩恵を今よりももっと受けていた時代から現在にかけてもなお、私たちは恵まれた自然によってものづくりができているんだとあらためて感じました。自然のゆたかさと、人々の暮らしのゆたかさは共存できるんだということが、長らく街中で暮らして生きてきた私にはとても新鮮で、素晴らしいことに思えます。