hatsutoki books vol.5 [Storm Last Night]

2016.06.25

今回紹介するのは、写真家・津田直の[Storm Last Night]。彼の祖父がかつて住んでいたという家を探しに、わずかな手掛かりをもとにはじまった、アイルランドの地への旅がおさめられています。

自身の記憶を遡りつつ歩き回るなかで、先住民の残した聖跡や、無文字文化に生きた人々が築いた住居跡、人間がかつて暮らしていた島々へ辿り着きました。風景が信仰の対象であったという古代の人々にとっては、その土地がどんな意味を持っていたのだろうかと、人と自然の関わりを考えながらそれぞれの場所を巡っていたのだといいます。

彼の捉える写真は、場所を決定づけるたしかな何かが写されているわけではない、自然の景色がほとんどなのですが、その風景になぜか固有の力強さを感じます。土地の空気や魅力というのは、そこにかつて人が住まった記憶や生き物の気配のようなものが蓄積されることで作られるのかもしれないと思うと、日常や旅先での風景もどこか特別に感じそうです。