経通し屋さん

2018.02.08

播州織の産地では、生産性を上げるために古くから分業によって織物が作られてきました。経(へ)通しという工程は、経糸を機械にかける一番手前で行われる工程で、今も人の手作業が必要とされている工程です。何千本もの糸を一本一本扱いながら、経糸の準備をしていきます。(経通しの工程については、こちらを読んでみてください。)

機屋さんと同様、経通し屋さんも家内工業と呼ばれる家族経営の形態で営まれているところが多く、こちらの工場も家族3名で行われています。うかがった時は、夜の9時前後。まだ、娘さんがコツコツとお一人で仕事をされていました。

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ドロッパー、綜絖、筬と三段階に分けて糸を通していき、綜絖の通し方はその織物の組織によって通す順序が不規則に変わっていきます。集中力と根気がいる作業ですが、職人さんは自分のペースで仕事ができるのがいいところだと話されていました。娘さんによれば、お母様は朝方早くからもっと夜更けまで長時間働かれているのだそうです。

産地に入ってものづくりの現場で感じるのは、街にあるような大きな企業の中での働き方との様々なちがい。当たり前のことですが、職人さんにとっては家は仕事場であり、仕事が生活と近くに寄り添っています。時に昼夜の区別がないくらい、工場を動かし続けなければいけないこともあります。そんな仕事を見ると、職人さんの身体が心配にもなりますし、なぜこんな働き方をしなければならないのだろうかとふと疑問を持つときすらあります。

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でも、おそらくどちらかといえば、こういう働き方のほうがより昔から伝えられてきた生活のリズムなのだとも最近思うようになりました。いくつになっても働くことができて家族や近しい人とゆるやかなつながりの中で働くということ。ものづくり産業全体が今、過渡期にある中で隔たる壁も沢山ありますが、人とのつながり方や価値観、仕事の仕方、暮らし方などあらゆる面で気づくことが沢山ある日々です。