hatsutoki books vol.31 [David Hockney photographe]

2018.06.19

今回ご紹介するのは、20世紀の現代美術を代表する一人、David Hockneyのポラロイドを集めた作品集。彼は1937年にイギリスで生まれて、63年にアメリカの西海岸へ拠点を移して、制作活動をしてきました。移り住んだ後の1960年代後半から1980年前半までに撮りためた、彼の日常と旅の道中をスケッチのように切り取った写真、そして、のちに高度に洗練されたキュビスムのテクニックを用いたような写真のコラージュ作品『CAMERAWORKS』が生まれるに至るまでのデイヴィッド・ホックニーの軌跡ともいえる作品です。

彼は、画家として長年に渡り活動を続けてきましたが、その中でもプールがモチーフとしてしばしば描かれていました。一人の男性が、プールで泳ぐ人物を見つめる絵。これが元になった、のちの彼の絵画作品がとても有名ですね。この写真の、プールサイドから視線を落とす男は実は彼の元恋人で、泳いでいるのはホックニー本人なのだそう。アメリカで彼に出会い、のちにホックニーは捨てられたも同然に別れたらしいのですが、それでも数年後、昔の恋人をとても象徴的に絵画に落とし込んで描いていました。彼が、どんな気持ちで、筆をとったのかとつい思いを巡らせてしまいます。

また、写真をつなぎ合わせて、二次元的な表現を変化させようとしたこの手法も、この頃から何気ない日常の風景を切り取った写真で行われていました。今でさえ、アナログでありながら、とても新鮮な手法に感じます。

西海岸の陽の光を彷彿とさせるような、鮮やかな色彩で描かれたポップアートが印象に強い彼の作品。しかし実は、その一つずつのピースは彼のとても日常的なことで、昔の記憶を、時には辛い過去の記録をも拾い上げて、時を経ながら自分の絵に昇華させる作風は、とても私的な日記のようで人間らしい行為に感じられます。

hatsutoki books vol.29 [AIM ISSUE 14 BOJAGI ボジャギ ]

2018.02.18

韓国のボジャギという布をご存知ですか。ポジャギの歴史やその種類、現代の作家によって作られるポジャギをたどったムックブック[AIM ISSUE 14 POJAGI]をご紹介します。

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ポジャギは風呂敷を意味するもので、大きく分けて宮廷で使われていた[グンボ]、庶民の間で使われていた[ミンボ]に分けられます。そして、これとは別に構造の側面から区分されており、裏地のない[ホッボ]、裏と表の二重構造の[ギョッボ]、二重の中に綿が詰められた[ソンボ]刺し子が施された[ヌビボ]などがあります。ポジャギと聞くと、布を繋ぎ合わせて作られたものを想像しますが、これは[ジョガッボ]と呼ばれるものなのだそう。ポジャギの素材や模様、大きさから生活や地位などの文化をも窺い知ることができるのです。

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韓服は、仕立てる時に曲線を描くように裁断するのだそうで、そこで必ず出てしまう端切れを使ったりしていたのではないかと書かれていました。布と服に携わっていると、端切れの一つ一つが愛おしく感じますが、ジョガッボを作った女性たちも同じような心地だったのかなと思います。名もない人々が、こんなにも美しいものを残していたと思うと、日々ひと時ずつなんでもない日常を大切に過ごしていきたいなと感じました。

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