先日、群馬県桐生市に行ってきました。桐生は東の西陣と呼ばれ、シルクの織物の産地で有名になった産地です。シルクを使った贅沢な「ハレ着」を作ってきた産地なので、高単価の織物が多く、今でも世界の名だたるブランドの生地を作っている産地でもあります。
街にはとても感度の良い老舗の有名セレクトショップもあります。ここまでエッジの効いた服を街の人が買っていくもなのかと尋ねたところ、店員さんも地元出身でいわく「実際は街のお客さんがほとんど。祖母や父の代でも大事なここ一番の行事ごとでは、洒落て出ることが多い、街にはそういうDNAが脈々と受け継がれているのでは」と。繊維産地の中では東京からの距離も近く、デザイナーや、文化人が昔から出入りしていた事も関係しているかもしれません。
写真は、ニードルパンチと呼ばれ生地と生地を張り合わせる特殊な機械を持っている工場にお邪魔したところ。すぐに実験できるようにかわいい端切れがたくさん準備されていて、体験をさせてもらったところ(かなりポップな仕上がりに…笑)。思いついたらすぐにプロトタイプが作れる環境が素晴らしい。この後、刺繍やさんにもお邪魔したのですが、そこでも、東京から来たデザイナーが一日ショールームで籠ってアイデアを練り、すぐに実験。というようなものづくりが実際にされているとのことでした。
このような、アイデアと実践の距離が近いことは新しいものを生み出すためにとても重要だと思います。桐生は東京から近いことでそれがおそらく昔から、ごく自然に行われていたのではないかなと想像できました。きっとその風土や職人さんの気質もデザイナーにとっても心地よいのだと思います。近年クリエーターの移住者も増えていて、今後がとても楽しみな産地の一つです。