
奥行き
2018.05.25
空の青、海の青、遠くの霞んだ景色の中に浮かぶ山の青。自然の中にある色は、時間や気温、湿度によって変化し、様々な光が混じり合い構成されています。美しい自然の色は、それがどこか遠く懐かしい記憶を蘇らせるからでしょうか、日々のふとした瞬間に目を奪われると身体の中までじんと染み渡る静かな感動があります。
先日、東京・青梅の壺草苑さんから本藍染のシャツやワンピースが染め上がり、到着しました。この藍染の色を見るといよいよ夏だなという気持ちになり、毎年わくわくしてしまいます。この色は青でも、ネイビーでもなく、「藍色」なのだと職人さんはいいます。完全に天然の染料のみで染められた色は、とても優しく自然の循環の中にあり、そして様々な色の層が重なる奥行きのある色なのです。
壺草苑さんの染めは、徳島で藍の葉から作られた天然染料を使います。染料はひと夏掛けて栽培され、手で摘まれ、秋から冬かけ発酵させ、およそ300日を費やし完成します。江戸時代から続く染料の技法ですが、何しろ、てまひま掛けて作られるこの染料は大変貴重で、染料を作る職人さん自体がもう日本に指折り数える程しかいらっしゃらないと聞きます。
どうかこの美しく、静かで、人の心を穏やかにしてくれる藍色が途切れないよう、私達も大切にものづくりに向き合い、この感動を誰かに伝えて行ければと願っています。
*壺草苑さんの染について、詳しい内容はこちらに記載されています。染にご興味の有る方は是非ご覧ください。
>>播州織・素材のものがたり No.3 “天然藍灰汁醗酵建藍染”
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