
「にしこはりこ」は、昔から名もなき作家たちによって作り続けられてきた郷土玩具の「張子」を、現代的なモチーフや作家さん自身のエッセンスを加えアップデートした作品。
どこか親しみがあり、作家の手の跡が感じられる形、気の抜けた表情、ゆらゆら揺れる仕掛け。見た人の顔が思わずほころぶ、愛しさあふれる作品たちがどのように生み出されているのか、作家の中西洋子さんに伺いました。
1.張子を作り出したきっかけと、なぜ張子だったのか教えてください。
メキシコの玩具職人のグメルシンド・エスパーニャさんの作品展をみたのがきっかけでした。 彼の作品は張子ではないのですが、木材などを使って素朴な仕組みでユニークな動きをするカラフルで楽しいおもちゃがたくさん展示されていて、とてもワクワクしました。 彼がインタビューの中で「動くおもちゃを作っているから、近所の子供たちに魔法使いと思われてる」と話していたのが印象的で、私も動く作品を作って魔法使いになりたいなと思いました。
学生時代に張子の技法でお面を制作したことがあったので、少し作り方を知っていたのと、郷土玩具の「赤べこ」などのゆらゆらする動きも好きだったので、同じ仕組みでいろいろ動く張子を作ってみることにしました。 張子は大掛かりな工具や機材など特に必要なく、家で制作できるので始めやすかったのもあります。
△グメルシンド・エスパーニャさんの砂で動くからくり玩具
2.張子のインスピレーション源はどこから来ていますか?
わたしの張子は基本的にはどこか揺れる作品が多いので、日常のなかでの動作や目にした印象的なシーン、映画や動画などの人や動物などの動きから発想したりしています。
絵付けは昔の郷土玩具や、海外の民芸品などの線の描き方や表情などみて参考にしています。
△中西さんが集めている郷土玩具や、海外の民芸品の一部
3.張子を伝統的な手法で作るのはなぜですか?
伝統的な郷土玩具の張子の風合いが好きなので、最初は独学でつくっていましたが、仲の良い張子作家さんに胡粉かけ(表面の白いコーティング)などを教わったりして、今の伝統的な作り方でつくれるようになりました。

△胡粉かけの様子
張子用の紙は埼玉の細川紙の工房『手漉き和紙たにの』さんに頼んで、使いやすい厚みや硬さのオリジナルの張子紙をつくっていただいて制作しています。

△オリジナルの手漉き和紙
張子は手作業で紙を貼り重ねてつくっているので、同じ型をつかっていても、同じ形にならない、ゆらぎがあるのも魅力の一つだと思っています。
4.張子を作っている時はどんなことを考えていますか?
スケッチを描かずに型にする粘土の形成からすることも多いので、動き方やモチーフのポージングなど思い浮かべながら、粘土をこねて形を色々探っています。 形はきれいに作りすぎずに、少し手癖がついていたり、愛嬌のある形を目指してつくっています。
△色を付ける前の張子たち
5.これからどのようなものづくりをしていきたいですか?
みた人が思わず笑顔になるような作品を作っていきたいとおもっています。 張子作品はもちろん、他の技法やアプローチ方法でもワクワクするような作品をつくっていきたいです。

△色を付ける前の張子たち
お話を聞いて、ゆるっとした作風でありながら伝統的な手法を取り入れ、手漉き和紙をオリジナルで作るなどこだわりの詰まった張り子たちが余計愛おしく感じられました。にしこはりこのInstagramにも沢山のアイデアがあり、見ているだけで楽しくなります。
中西さんご本人もふわっとした雰囲気が作品に似ていて、魔法使いというより妖精になれそうです。これからも楽しい作品を楽しみにしています。
中西さん、ありがとうございました。

△にしこはりこ/張り子(人参喰い卯)

△にしこはりこ/張り子(親子卯)